本記事は「零紅い蝶 考察」として、「虚エンディング」における澪と繭の心理を整理しています。
『零 ~紅い蝶~』の虚エンディングは、本作の中でも屈指の複雑な結末です。
そして設定資料集には、ゲーム本編には収録されなかった後日談『虚の果て』も掲載されています。
ディレクター自身は「蛇足」と判断して削除したと語っていますが、その内容は虚エンディングの不穏さをよりはっきりと浮かび上がらせるものでした。
本記事では、虚エンディングのあらすじを整理しながら、戦闘中に明かされる繭と紗重の本心、澪が本当に繭を救えたのか、そして後日談の後味の悪さについて考察していきます。
※ネタバレが多く含まれますので、本作未プレイの方はこちらの記事からお読みください。
虚エンディング|あらすじ

——皆神村の地下深くに存在する「虚」へと辿り着いた澪。
虚の淵では、紗重の想いが暗い水底のように沈んでいました。
ねえ、八重……。
私ね…。
「一緒に逃げよう」って言ってもらえて、本当に嬉しかった。
村の外に出て、あなたとずっと二人で生きていけるんだって、胸が高鳴った…。
だから、一緒に逃げたんだよ。
でも
あのとき、あなたは私の手を離して…置いていった……。
いつも一緒だって約束してたのに、どうして戻って来てくれなかったの?
離れ離れになるくらいなら、私はあなたに殺されたかった……。
蝶になりたかった…っ……。
けど、ようやく…コレで一つになレル。
「ころしテ…ころシテ…コろシテ…コロシテ……」
——射影機を構え、繭から紗重を引き剥がそうとする澪。
次第に、繭の想いが澪の胸に伝わってきます——。
ねえ、澪……。
…あのとき、私がわざと落ちたって、本当は気づいてたんでしょ……?
私ね…。
澪が私を置いて、このままどこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって、恐かった。
だから、崖から落ちたの……。
でも
あれから澪は、私のそばにいてくれた…。
守ってくれた……。
言うことをきいてくれた……。
この足が痛むたびに、私は嬉しかったんだよ……?
…もう、置いていかないよね。
ずっと一緒だよね……?
……ね、一緒にいきましょ……。
深い場所へ……。
もっともっと深い場所へ……。
もうずっと…離れないで済む場所へ……。
——射影機による最後の一撃。
その瞬間、紗重と重なった繭の想いが澪へ流れ込みます。
私たちは一緒に生まれてきた…。
けど、どんなに望んでも…結局は別々の人間で、別々に生き、死んでいく……。
分かってる……。
分かっているから、苦しいの……。
「だから、いいよ。ころして……」
——虚へ押し戻された紗重。
紗重と繭は分かれながら、暗い底へ落ちていきました。
また、おねえちゃんが落ちていく……!
あの日の山道。
私はおねえちゃんの手を離して先を走ってしまった。
そのせいで、おねえちゃんは崖から落ちた…。
もし、あのとき手を離さなかったら……。
もし、あのときそばにいられたのなら……。
今度こそ、助ける……!!
澪は射影機を捨て、繭のもとへと駆け寄ります。
伸ばした手が、繭の手を掴みました。
「み……みお…っ…!」
繭は、澪の細い腕にしがみつきます。
繭を虚から必死に引き上げようとする澪。
しかし、すでに力を使い果たしていた澪は、繭の重みを支えきれません。
そのとき、耳元に樹月の声が響きました。
「……その中は絶対に見ちゃダメだっ……!」
息を呑む澪——。
見てはいけない場所…。
目を向けてはならない禁忌…。
手が滑りかけた瞬間、澪は思わず虚を覗いてしまいました…。
——消える音。
時間さえ、止まったようでした。
そんな中、澪の意識だけが虚の底へと落ちていきます。
(み…ては……いけ…ない……)
そう思っても、もう戻れません。
ほの暗い底に、白い塊のようなものが見えました。
澪がそれを認識した瞬間、無数の光景が流れ込みます。
数えきれないほどの人々が、折り重なり、蠢いている…。
終わらない闇。
終わらない苦痛。
終わらない狂気。
時が流れない場所で、それらはずっと続いていました。
そして、そのすべてが一斉に澪を見ます。
次の瞬間、ある亡者の顔が目に焼き付きました。
——喉を引き裂くような悲鳴。
澪は目を押さえて座り込みます。
指の隙間から溢れる紅い血…。
背後で、虚の淵から繭が必死に這い上がりました。
そしてそのまま澪のもとへと駆け寄り、咄嗟に背中を抱きしめます。
「みお…澪っ…!」
その後、どうやって村を出たのか。
どうやって戻ったのか。
澪には全く分かりませんでした。
気がついたときには沢の近くで、繭と一緒に倒れていたのです。
そして皆神村は、もう二度と戻れない場所になっていました……。
——皆神村が沈んだダム湖。
夏の終わりの陽射しが、水面を鈍く照らしていました。
湖畔のベンチに澪と繭が並んで座っています。
澪の目に巻かれた包帯…。
あれから澪は、光を失いました。
それでも、繭はここにいます。
間に合った……。
今度こそ、おねえちゃんを助けられた……。
肩にもたれてきた繭の体温を感じて、澪はそう思いました。
——澪の手をしっかりと握る繭。
かつては、足の悪い繭を澪が支えました。
これからは、光を失った澪を繭が支えることになります。
繭の表情には、穏やかな笑みが浮かんでいました。
「さ、澪……行こうか」
「うん」
繭は澪に寄り添ったまま、そっと囁きます。
「ずっと、一緒だから……」
その約束の言葉は幼い頃のように優しく、ほどけない糸のように澪の中へ残り続けていきました——。
——縁側に面した澪と繭の部屋。
ベッドの上で、澪は眠っていました。
隣には繭がいます。
けれど、澪の眠りは穏やかではありません。
一度だけ見てしまった虚の底。
折り重なる人々……。
終わらない苦痛……。
最後に見た顔……。
その光景が、頭の中で何度も繰り返されます。
「う……う…ぁ…」
澪は汗に濡れ、苦しそうに身をよじりました。
「うぁあぁ!!」
悲鳴とともに目を覚ました澪。
気がついた繭が、澪の体を起こします。
そして、慣れた手つきで澪の額の汗を優しく拭いていきました。
「……もう忘れて。何もかも。私がずっとそばにいるから……」
澪は息を整えながら、繭に縋りつきます。
繭はそんな澪を、強く抱きしめ返すのでした——。
落ち着いた澪を確認すると、繭は静かに立ち上がります。
「お水、持ってくるね」
澪に声を掛けて、部屋から出ていく繭。
部屋には西日が差し込んでいます。
澪には、その光が見えません。
けれど、肌に触れる温かさで今が夕暮れなのは分かりました。
小さな違和感——。
さっき繭に抱きしめられた瞬間、心がひどく冷えた気がしたのです。
(隣にいてくれたのは、おねえちゃんじゃ…なかった……?)
——脳裏に浮かぶ光景。
虚の淵で、繭に手を伸ばす。
掴んだのは、紗重の手。
そして本当の繭は、暗い底へ落ちていく……。
そんなはずはない!
おねえちゃんはここにいる…。
目が見えなくても、それだけは分かる……。
じゃあ、あの冷たさは何だったの……?
八重に置いていかれて崖に落ちた紗重……。
私に置いていかれて崖に落ちたおねえちゃん……。
二人はあまりにも似すぎている……。
深く結びついた二人を引き剥がすには、射影機の力じゃ足りなかったんだとしたら……。
……おねえちゃんの中に、紗重がまだ…残っている……?
澪の頭の中に、別の映像が浮かび上がります。
夕暮れの部屋。
傍らにいる影。
そこにいるのは、優しく微笑む繭ではありません……。
血に濡れた紗重が、澪にしがみついて——。
そのとき、澪の顔に当たっていた西日がふっと遮られます。
いつの間にか目の前に繭が立っていました。
手には、水の入ったコップがあります。
繭は何も言いません。
ただ、見えないはずの視線だけが、冷たく澪の上に落ちています。
動けない澪……。
蝉の鳴く声だけが部屋の外で痛いほど響いていました。
西日の熱は、肌の上に残っています…。
それなのに、胸の奥だけが冷えていく……。
ほんの少し目を細める繭。
澪はその気配を感じたまま、息を止めます。
今、ここにいるのは…本当に繭なのか……。
その問いだけが、夕暮れの部屋に残り続けました——。
虚エンディング考察

澪は今度こそ繭の手を離さず、虚から救い上げました。
しかし、その先に残ったのは本当に救いだったのでしょうか。
ここからは紗重と繭の本心、澪が光を失った意味、そしてこの結末がなぜこんなにも後味が悪く見えるのかを整理していきます。
紗重の本心|八重を憎みながら待ち続けた理由

紗重は八重を憎んでいました。
- 八重は「一緒に逃げよう」と言ってくれた
- 八重の言葉を信じて、村の外で二人だけで生きていく未来を夢見た
- でも、手を離され、置いていかれて、最期は宮司たちによって首を吊られた
その痛みが紗重の中に残り続けていたのは確かです。
けれど、虚エンディングで見えてくるのは憎しみだけでは説明できない、もっと根深いものでした。
紗重を虚の底に縛り続けてきた憎愛の矛盾——。
八重を憎んでいる…。
それでも八重を待っている……。
置いていかれたことが許せない…。
それでも、八重の手で終わることを諦めきれない……。
「ころしテ…ころシテ…コろシテ…コロシテ……」
この声は、憎しみと愛を同時に抱えている矛盾から生まれていました。
紗重は、戻ってきた八重に助けてもらいたかったのではありません。
最期の望みとして、八重の手で終わらせてもらいたかったのです。
離れ離れになるくらいなら、八重に殺されたかった…。
他の誰でもなく、八重の手で蝶になりたかった……。
- 八重の手が私の首にかかる
- 八重の中に私が残る
- 八重と別々に生きて、別々に死んでいく現実から逃れられる
それが紗重にとって「ずっと一緒」という約束を完成させるために必要なことでした。
だから紗重は、いつまでも虚の淵で八重を待ち続けます……。
このときに聞こえてくる「コロシテ」という声。
それは、八重ともう離れずに済む場所で縋った「歪んだ約束の残響」だったのでしょう——。
繭の本心|それでも澪は手を伸ばす

…あのとき、私がわざと落ちたって、本当は気づいてたんでしょ……?
繭は澪に置いていかれることに恐怖していました。
あの日、澪がどこか遠くへ行ってしまうように見えた。
だから、崖から落ちた…。
現実に耐えられなくなった末の突発的な行動でした。
ただ、あの日から澪は繭のそばにい続けました。
- 心配してくれた
- 守ってくれた
- 私だけを見てくれた
繭にとって足の傷は、ただの痛みではありません。
澪を自分のそばに留めておくための「歪んだ繋がり」になったのです。
「この足が痛むたびに、私は嬉しかったんだよ……?」
- 痛むたびに、澪がそばにいる理由を確かめられた
- 痛むたびに、もう置いていかれないと思えた
- 痛むたびに、澪との関係がまだ切れていないと感じられた
そこにあったのは痛みを通して大切な人を繋ぎ止めようとする、あまりにも幼く、あまりにも切実な安心でした。
「……もう、置いていかないよね。ずっと一緒だよね……?」
繭が求めていたのは、澪と共に生きて帰る未来ではありませんでした。
澪と二度と離れずに済む場所。
たとえそこが虚の底だったとしても、繭には「ずっと一緒」でいられる場所に見えたのです…。
- 澪を繋ぎ止めたい
- 置いていかれたくない
- 別々になるくらいなら、深い場所へ沈みたい
繭が望んでいたのは「澪と一緒に終わりへ向かうこと」だった……。
これは澪にとって、あまりにも過酷な現実です。
- 先に走ってしまったこと
- 繭を置いていってしまったこと
- そのせいで繭が崖から落ち、足に傷を負ったこと
澪はずっと、幼い日の崖の事故を「自分の罪」として抱え続けてきました。
だからこそ繭にもう辛い思いをさせないように「守る」のです。
しかし、その事故の意味は大きく揺らぎました。
私が守ってきたはずのおねえちゃん。
私のせいで傷ついたはずのおねえちゃん。
そのおねえちゃんが、あの傷によって私をそばに留めていた……。
そして、今度は一緒に終わることを望んでいる…。
澪の罪悪感で支えられていた関係は、ここで根本から崩れます。
それでも澪は、繭に手を伸ばしました。
繭の奥底の歪みを知っても。
紗重と同じ深い闇を見ても。
共に生きていく未来へ、繭を連れ戻すために——。
澪はなぜ虚を見てしまったのか

あのとき手を離してしまった後悔は、ずっと澪の中に残り続けていました。
また、おねえちゃんが落ちていく……。
あの日と同じことが、目の前でもう一度起きている……。
澪は射影機を捨て、繭のもとへと駆け寄ります。
繭の手を掴んだ澪。
しかし、力を使い果たしていた澪は繭の重みを支えきれません。
そのとき、耳元に樹月の声が響きます。
「……その中は絶対に見ちゃダメだっ……!」
見てはいけない場所…。
目を向けてはならない禁忌…。
言われるまでもなく、澪はそのことを分かっていました。
ただ、ようやく掴めた手が滑りかけた瞬間、目を閉じていることなどできませんでした。
視界に入ってしまう虚——。
——それでも、おねえちゃんを助ける…!!
あの日離してしまった手を今度こそ離さないために、たとえ虚が見えたとしても、澪は目を逸らしませんでした。
あのときの後悔を繰り返さずに済んだ…。
けれど、その代わりに目が不自由になった…。
虚エンディングの痛みはここにあります。
繭を助けた代償として、光を失った澪。
繭を虚から救い上げたときから、澪は繭なしでは進めない世界へと落ちてしまったのです…。
光を失った澪と、足の悪い繭

澪が気遣い、澪が守り、澪が手を引く——。
幼い日の事故以来、二人の関係はずっと「足の悪い繭を、澪が支える形」で続いていきました。
しかし、虚エンディングではその形が反転します。
「光を失った澪を、繭が支えていく形」へと——。
一見、澪に寄り添う繭は優しく見えました。
失ったものを、もう片方がそっと補う姉妹愛のようです。
けれど、この優しさはどこか不穏でした。
一人では外の世界を見られなくなった澪。
歩くときも、進むときも、繭の手や声を頼ることになります。
- 繭が澪を支える
- 澪が繭の手を必要とする
二人の関係が以前よりも深く結びついていく…。
ここにあるのは自由な「一緒」とは少し違います。
お互いの欠けた部分によって、離れられなくなった「一緒」でした。
澪は繭を虚から救い上げた代わりに、光のない世界へと落ちていきます。
そしてその世界の中で澪の一番近くにいたのが繭です。
声をかけるのも。
手を引くのも。
進む先を示すのも。
これからは、すべて繭なのです。
- 足の悪い繭
- 光を失った澪
二人の欠落が噛み合ったとき、虚エンディングは救いの顔をして、二人をもう一度「閉じた関係」へと結び直してしまいました。
澪に寄り添う繭は、一見優しく見えます。
しかしその寄り添いは、澪を支えるためのものだけではありませんでした。
澪を自分のそばへ留めておくための、静かな重みでもあったのです。
繭の最後の微笑は優しさか、所有欲か

虚エンディングの最後、湖畔のベンチで澪と繭は並んで座っています。
澪の目には包帯が巻かれ、繭はその隣に寄り添っていました。
「さ、澪……行こうか」
そう声をかける繭の表情には、穏やかな笑みが浮かんでいます。
そして、そっと囁きます。
「ずっと、一緒だから……」
このときの微笑は、とても優しく見えました。
- 光を失った澪を支えようとしている
- これからは自分がそばにいると伝えている
- もう一人にはしないと約束している
そう読めば、静かな救いのようにも見えます。
しかし、虚エンディングの怖さはその微笑を優しさだけでは受け取れないところにありました。
- ようやく、澪が外の世界を見られなくなった
- ようやく、澪が私から離れられなくなった
- ようやく、置いていかない澪が手に入った
その喜びが、優しさのように見えている…。
そう受け取ることもできるのです…。
「この足が痛むたびに、私は嬉しかったんだよ……?」
こうした繭の本心を知ると「所有欲の充足」にも見えてしまう微笑……。
- 澪を支えていこうとする優しい顔なのか…
- 澪を自分のそばに留められた喜びの顔なのか…
きっと、そのどちらもほどけないまま、あの静かな微笑の中に溶け合っていたのでしょう——。
虚の果て|澪が助けたのは本当に繭だったのか

澪は虚に落ちていく繭の手を掴みました。
- あの日、崖で離してしまった手
- 今度こそ離さなかった手
表面上は紗重が虚へ落ち、繭が澪に助けられたように見えます。
しかし「虚の果て」では、その認識が静かに揺らぎ始めていく——。
澪は虚の底で見てしまった光景に苦しみ続けていました。
- 折り重なる人々
- 終わらない苦痛
- 一斉にこちらを見る無数の影
光を失ってもその光景だけは消えてくれません。
そんな澪に繭は優しく寄り添います。
「……もう忘れて。何もかも。私がずっとそばにいるから……」
この言葉だけを切り取れば、繭が澪を支えようとしているように思えます。
けれど澪は、その抱擁の中で違和感を覚えました。
繭に抱きしめられた瞬間、心がひどく冷えたように感じたのです。
そして、ひとつの疑問が浮かび上がりました。
あのとき助けたのは、本当に繭だったのか…。
澪の脳裏に最も恐ろしい光景がよぎります。
- 虚の淵で掴んだのは繭の手ではなく紗重の手だった
- 本当の繭はあのまま虚の底へ落ちていった
もちろん、それが事実だと断定されたわけではありません。
ただ、この疑念の恐ろしいところは、入れ替わりがなかったとしても、不安が拭えないところです。
繭の中にあった「澪と離れたくない」という願望は、紗重に憑かれたことで「初めて生まれたもの」ではありませんでした。
- 崖からわざと落ちたこと
- 足の痛みを嬉しいと感じていたこと
- 自分を気にかける澪に満足していたこと
それらは元々繭自身の中にあった感情です。
そのため、仮に紗重が本当に虚へ落ちていたとしても、繭の奥にあった冷たさまで消えたとは言い切れないのです。
紗重が残っているから怖いのではない…。
紗重は消えたはずなのに、繭自身の中にも同じ願望が残っているかもしれないことが怖い…。
- 八重に置いていかれた紗重
- 澪に置いていかれた繭
二人はあまりにも似ていました。
だから澪は分からなくなってしまう…。
そばにいるのは繭なのか…。
繭の姿をまとった紗重なのか…。
それとも、二人の境界が曖昧なまま残ってしまった存在なのか…。
光を失った澪には、もう確かめることができない——。
穏やかに終わったように見えた虚エンディング。
その奥に沈んでいた不安を、再び浮かび上がらせたのが「虚の果て」でした。
- 澪は繭を助けた
- けれど、繭の奥にあった願望まで救えたのかは分からない
- 紗重は虚へ落ちた
- けれど、紗重と繭が本当に分かれたのかは分からない
目の前にいるのは本当に澪の知る繭なのか…。
その問いだけが、夕暮れの部屋に残り続けます——。
総括|虚エンディングとは何だったのか

澪は繭を虚から救い上げました。
- 繭は助かった
- 澪は今度こそ後悔を繰り返さずに済んだ
表面上はハッピーエンドです。
けれど
- 繭を救えたように見えて、繭の奥にあった闇までは救えたのか分からない
- 澪は繭を助けたはずなのに、それが本当に繭だったのか、もう自分の目で確かめることはできない
何の区別もつかないまま、この先もずっと澪は不安を抱え続けていきます。
虚エンディングとは、澪が曖昧な恐怖を抱えたまま、救ったはずの繭に依存せざるを得なくなった結末でした。
もう、元の形には戻れない——。
虚が「澪が光を失い、生き残ったまま繭への依存へ反転していく結末」だとすれば、双籠りは「生きて帰ることを手放し、闇の中で二人だけの一体化へ閉じていく結末」です。
次回は、繭の想いとともに溶け合う成就……「双籠りエンディング」が何を示しているのか考察していきます。
よろしければ引き続きお付き合いください。
前回の記事 次回の記事
零~紅い蝶~の考察記事一覧
考察記事①【隠された設定】紹介|澪はなぜ失明したのか?父の行方と皆神村を解説
考察記事②【崖の場面】あらすじ|なぜすれ違う?澪と繭の見ている世界の違いを解説
考察記事③【前日譚小説】あらすじ|なぜ帰郷したのか?|澪と繭の直前の物語を解説
考察記事④【黒炎の蝶エンド】あらすじ|繭の望み・澪の決断・黒い蝶を解説
考察記事⑤【本編冒頭】あらすじ|言いかけた言葉と結末への繋がりを解説
考察記事⑥【本編ストーリー】あらすじ|澪はどう変わっていったのか?を解説
考察記事⑦【紅い蝶エンド】あらすじ|澪はなぜ繭を…せてしまったのか解説
考察記事⑧【マヨイガ/片翅エンド】あらすじ|澪の抱えた代償を解説
考察記事⑨【凍蝶エンド】あらすじ|繭の泣き笑いと雛壇の部屋の首を解説
考察記事⑩【陰祭エンド】あらすじ|澪はなぜ「一緒に落ちようか」と言ったのか?を解説
※本記事は『零紅い蝶 考察』シリーズの一部です。
※記事内画像には、作品世界をもとに作成した非公式の生成画像、および『零 ~紅い蝶~REMAKE』『零 ~眞紅の蝶~』本編のスクリーンショットが含まれます。『零 ~紅い蝶~』に関する権利はコーエーテクモゲームスに帰属します。
※現在入手が難しい公式資料の内容にも触れていますが、物語理解に必要な範囲で要点を整理し、考察を中心に構成しています。

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