【零紅い蝶考察⑥】本編ストーリーネタバレ|澪はどう変わっていったのか?繭とのズレをあらすじから解説

この記事は約25分で読めます。

本記事は「零紅い蝶 考察」として、本編物語における澪と繭の心理を整理しています。

本記事ではみおが本編中にどう変わっていったのかを追っていきます。

最初は「守る妹」としてまゆを連れ帰ろうとしていた澪が、なぜ繭の恐怖そのものに触れていくことになるのか

本編を振り返りながら、繭とのズレと澪の心境の変化を整理していきます。

※ネタバレが多く含まれますので、本作未プレイの方はあらすじからお読みください。


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あらすじ解説|エンディングに至るまでのストーリー

本編の物語は澪と繭が幼い頃よく遊んで過ごした「思い出の沢」を訪れるところから始まります。

繭は何かを言いかけ、澪もまた「あのとき……」と事故の出来事に触れかけます。
けれど、その言葉の続きをどちらも最後まで口にできません。

その後、繭は紅い蝶に導かれるように森の奥へ消え、澪はその後を追うことになります。

※あらすじ一覧|ジャンプリンク

序ノ刻|マヨイガ(まよいが)

思い出の沢
あらすじ①

回想から目覚めた澪。
ふと顔を上げると、紅い蝶を追って森の奥へ入っていく繭の姿が見えました…。

澪は慌てて繭を追いかけます。
先を行く繭の後ろ姿は、白い着物の女性と重なって…。

——異様な気配へと変わっていく空気。


「行っちゃだめ! おねえちゃん!!」

追いついた澪が、繭の肩に手を触れた瞬間…。
不気味な光景が脳裏に流れ込みます。

首を吊られた女性…狂笑する女性…。

そして——澪の手が、繭の首にかかる…。

「……ロシテ」

思わず手を離す澪。
いつのまにか繭の姿はなく、辺りは暗闇に包まれていました。

澪は繭を探すため、さらに森の奥へと進みます。


やがて、遠くから「悲哀な歌」が聞こえるとともに「灯りの列」が見え始めました。
祭りでもやっているのかといぶかしむ澪。

鳥居の前では、顔を覆って泣いている白い着物の女性を見かけます。

「……ごめ……なさい……っ……ごめ、んなさい……っ」

女性の顔を覗こうとした瞬間、一匹の紅い蝶が目の前を横切りました。

紅い蝶に目を奪われた先には、静かに立ち尽くしている繭の姿が…。

繭はゆっくりと振り返りながら呟きます。

「地図から……消えた村……」

あらすじ②


  • 鳥居の前で泣いていた「八重やえ」はこの瞬間、澪に重なり始める
  • これ以降、澪は八重の視点や後悔に少しずつ引き寄せられていく

一ノ刻|地図から消えた村(ちずからきえたむら)

地図から消えた村
本編スクショ「零紅い蝶REMAKE」
あらすじ②

澪はとある噂を思い出します。
祭りの日に忽然と消え、一人だけが生き残った村——皆神村みなかみむら…。

振り返ると鳥居の先が消えていました。
どうやら、帰るためには他の出口を探すしかないようです…。

鳥居からくだっていくと、すぐに見えてくる大きな屋敷「逢坂家おおさかけ」。
人の気配を感じた二人は、出口の情報を得るために屋敷の中へと入っていきます。


屋敷では射影機しゃえいきという不思議なカメラを拾いました。

それは目に見えざるものを写し、打ち払うことのできる道具でした。

探索を進める内に、ここに迷い込んだ人物が他にもいることを知った澪。

「感じた気配はこの人のものだったんだ」と考えながら残されていたメモを読んでいたとき、その人物が霊となった姿で二人に襲いかかります。

澪は繭を守るため、射影機を構えて霊を写し取りました。

断末魔をあげながら消えていく霊。
精神的に限界を迎えた澪は、その場で気を失ってしまうのでした…。


——どれほど時間が経ったでしょうか…。

目を覚ますと、繭がいません。

咄嗟に部屋から飛び出る澪。
すると、屋敷から出ていく繭の後ろ姿が見えました。

「澪、ごめん。やっぱり私、行かなきゃ!」

今まで澪のそばから離れることなどしなかった繭が、澪を置いていってしまう…。

不吉な予感に胸を締めつけられながら、澪は繭を追いかけるのでした。

あらすじ③


  • 繭は八重の双子の妹「紗重さえ」に導かれている
  • 繭は物語開始以前からすでに紗重の影響を受けていた
  • 皆神村に入ったことで紗重との重なりがよりはっきりと表面化していく

二ノ刻|双子巫女(ふたごみこ)

蔵の青年にアドバイスをもらう澪
あらすじ③

繭を追って屋敷の外へ出た澪は、村の中をさまよう霊たちに見つかりました。
彼らは澪を誰かと見間違え、口々に逃げたことを責め立て捕らえようとします。

——双子が祭りに参加し儀式を執り行えば、闇に閉ざされてしまった皆神村は救われる…。

彼らはそう信じているようでした。


さまよう霊たちから逃げ切った澪は「くら」に閉じ込められている青年「立花樹月たちばないつき」と出会います。

蔵の扉は開きませんでしたが、窓越しに言葉をわすことはできました。

八重やえ。早く村から逃げるんだ。でないと大切な人を失うことになる…」

樹月は澪を「八重」と呼び、助言を与えます。

目の前では紅い蝶が静かに舞っていました。
その光景は美しいはずなのに、澪の胸にはなぜか切なさが込み上げてきました。


——紅い蝶に導かれていく澪。
やがて、村の一番奥にそびえる立派な屋敷「黒澤家くろさわけ」に辿り着きます。

「ここに、おねえちゃんがいる…!」

澪は、意を決して屋敷の中へと足を踏み入れるのでした。

あらすじ④


  • 澪が紅い蝶に切なさを覚えたのは、八重の中に残っていた「紗重に対する後悔」が重なっていたから

三ノ刻|大償(おおつぐない)

縄の男
本編スクショ「楔」
あらすじ④

暗闇に包まれた屋敷では、逃げ惑う村人たちの霊で溢れていました。
彼らは「大償おおつぐない」「くさび」という言葉を残しながら去っていきます…。

聞き慣れない言葉に不安を覚えながら進んでいくと、澪は繭を大広間で見かけました。
しかし、繭は澪には気づかず進んでいってしまいます。

すぐに追いかける澪。
その瞬間、狂笑する血塗ちまみれの女「黒澤紗重くろさわさえ」と、縄の男「楔」が現れ、澪の行く手を阻みました。

紗重も楔も、澪が今まで遭遇してきた霊とは比べ物にならないほどの瘴気しょうきびています。
澪は咄嗟とっさの機転で隠れてやり過ごすと、再び繭を探し始めました。


奥に進んだ雛壇ひなだんの部屋で、澪は倒れている繭を見つけます

抱きかかえて無事を確認すると、繭は目を覚ましました。

「……誰かが……ずっと私を呼んでた……戻ってこいって。それで、行かなきゃって思って……。澪、怖いよ。一緒にいよう。ずっと一緒にいよう……約束して」

いつもとは様子が違う繭に、澪は一瞬戸惑います。

しかし、幼い頃「繭を置いていってしまった後悔」と「繭を傷つけてしまったという自責の念」、そして何より「繭を助けたい」という強い想いが澪の心を奮い立たせました。

「約束するよ。どこにも行かない。一緒にここから出よう!」

澪はそう言って、繭をそっと抱きしめるのでした。

あらすじ⑤


  • 繭は、祭りを望む者たちの声によって「村に戻る側」へと意識が引き込まれていた
  • この頃から繭には「八重と逃げようとしていた頃の紗重の記憶」が強く混じり始める

四ノ刻|秘祭(ひさい)

置いていかれる繭
あらすじ⑤

来た道を戻り、再び大広間へ差し掛かった澪と繭。
繭はふいに駆け出して、紗重が狂笑していた場所で立ち止まります。

「……おねえちゃん?」

呼びかけても、繭はすぐには答えません。

けれど顔をのぞき込むといつもと同じように微笑みます。
その様子に澪は違和感を覚えるのでした。


——村の出口を探るため、黒澤家の探索を進める澪と繭。

屋敷内には数多あまたの書物がありました。

皆神村には「うつろ」と呼ばれる黄泉に通じる穴があり、定期的に贄を捧げる必要があること。
紅贄祭あかにえさいとは、双子の姉が妹を殺して紅い蝶を誕生させ、虚を鎮める儀式だということ。
楔は、紅贄祭が失敗したときの代替として、虚に捧げられる贄だということ。
儀式が失敗したときに起きる災厄のことを、大償と呼ぶこと。

そして——最後の双子巫女「八重」が村から逃げたことで儀式が失敗してしまったこと…。

澪は様々なことを知っていきます…。


——黒澤家の御堂みどうまで進むと、繭は扉の前で立ち止まりました。

「わたしたち、やっぱり逃げられないよ……」

繭の目元は涙で濡れていました…。
繭を奮い立たせようと必死に励ます澪。
心が折れてしまいそうな繭を心配しながら、それでも「一緒に帰るため」に先へと進みます。


辿り着いた先は、座敷牢ざしきろうでした。

ここでは「楔」として贄となった民俗学者「真壁清次郎まかべせいじろう」が生前、幽閉されていたようです。
村の異常さに触れ、澪は繭を連れて逃げる決意をさらに固めていきました


——座敷牢の探索を終えて出ようとした瞬間、繭を残して牢の扉がひとりでに閉まります。
扉には鍵がかかってしまい、開けることはできません。

「まって! おいていかないで…」

「大丈夫……すぐに戻るから…」

「さっき約束したじゃない!」

繭は牢の隙間から澪の手を強く握りしめます。

「手を……離さないで……」

その言葉は澪に「あの日」の記憶を呼び起こさせました。

けれど、鍵がないままでは繭を助け出すことはできません。
澪は迷いながらも、繭の手を振りほどきます…。


——その瞬間、「置いていかれた」という感覚が繭の中で渦巻きました

「オネエチャン、マタワタシヲオイテイクノ?」

不審な繭の言葉に澪は不安を覚えながらも、鍵を見つけるために先を急ぐのでした。

あらすじ⑥


  • 澪にとっては「助けるために離す手」
  • 繭にとっては「あの日」と同じく「また置いていかれる手」
  • ここで二人のズレは決定的に表面化する

五ノ刻|贄(にえ)

皆神村の全貌を知る澪
あらすじ⑥

澪は再び「逢坂家」を訪れます。

逢坂家の地下道では、村に入る前に聞こえてきた「悲哀な歌」が反響していました。
この地下道——通称「深道ふかみち」のどこかでは、村人たちが集まって歌う場所があるのでしょう…。

深道の奥へと進んでいくと、座敷牢の鍵が見つかりました。


——鍵を手に入れて黒澤家へ戻った澪。

しかし、座敷牢に繭の姿がありません。

残されていたのは、たどたどしい文字で書かれた書き置きだけでした。

「マタ、ワタシヲオイテイクノ」

その文字に触れた瞬間、澪の脳裏に八重と紗重の記憶が流れ込みます。


双子巫女の二人は儀式の直前、村から逃げようとしていました。
けれど山道の途中で八重は紗重の手を離し、紗重だけが村人に捕らえられてしまいます。

置いていかれた絶望の中で紗重は首を吊られ、虚に捧げられる…。


この記憶は、幼い頃に繭の手を離してしまった「澪自身の過去」とも重なりました。

——私たちと同じ……。

澪は、八重の後悔も紗重の痛みも、自分たちとは無関係ではないものとして受け止めます。

あらすじ⑦


  • 八重と紗重の悲劇を「この村で起きた昔話」ではなく、自分と繭に「今この瞬間重なるもの」として澪は初めて受け止める
  • 以後、八重の後悔と紗重の痛みは、澪にとって他人事ではなくなっていく

六ノ刻|鬼隻(きせき)

桐生茜
あらすじ⑦

黒澤家を出ると、立花家たちばなけ」の二階渡り廊下を歩く繭を澪は見かけます。

ただ、立花家の入口は固く閉ざされていて入ることができません。
澪は中へ入る手がかりを求め、立花家と繋がっている屋敷「桐生家きりゅうけ」に立ち寄ります。

桐生家にも、かつて紅贄祭を行った双子がいました。
姉の「あかね」は儀式で妹の「あざみ」を失い、片割れを殺して生き残った者——鬼隻きせきとなっていたのです。

儀式を終えた鬼隻は心を壊したまま生きることが多く、中には一夜で白髪になってしまう者もいるといいます。

その話を知った澪は、白髪となった蔵の青年「樹月」のことを思い出します。
儀式の痛みと後悔を知っているからこそ、樹月はかつて八重と紗重を逃がし、今また澪たちを村の外へ逃がそうとしているのでした…。


桐生家ではさらに、茜と薊にまつわる悲劇も明らかになります。

愛する妹を失って毎日悲嘆ひたんに暮れる茜のため、父親は薊に似せた人形を作りました。
すぐに茜は、人形を本物の薊だと思いいつくしむようになります。

しかし、その人形には「虚から来た何か」が宿ってしまい、やがて茜を操ります。
そして、茜を助けるべく人形を葬ろうとした父を、茜は手にかけてしまうのでした…。


——澪は薊の霊から儀式のときの本心を知ることになります。

薊は茜に殺されることを自ら望んでいました。

「後悔してほしくなかった。やっと一つになれたのだから……」

姉が妹を殺す儀式…。

澪には、死を望む気持ちまでは理解できません。

けれど、茜が薊に向ける強すぎる想いだけは、痛いほど伝わってくるのでした。

あらすじ⑧


  • 「一つになりたい」という願いが、死さえ受け入れるほど切実なものになりうることを澪は知る
  • 皆神村において双子は、先にうまれたほうが「妹」、後にうまれたほうが「姉」

七ノ刻|紗重(さえ)

迫りくる紗重
あらすじ⑧

桐生家の深道から立花家に入った澪は、繭を追って奥へと進みます。

けれど、追いついたはずの繭は紗重の姿へと変わっていました。

「八重……マタ私ヲオイテイクノ?」

繭なのか、紗重なのか…。
立花家の中で、二人の姿は何度も重なっていきます。

澪は恐怖に揺れ、時には紗重から隠れながらも、繭を追い続けました。


——樹月の部屋で、澪は再び繭の姿を見かけます。

樹月の部屋には鍵がかかっていて入れません…。

繭は澪に気がつくと、格子窓の隙間から手を伸ばして澪の手を掴まえ、愛おしそうに自分の頬へとあてがうのでした。

一瞬、繭の姿が紗重の姿に重なります…。

澪が思わず手を引くと、繭は傷ついた表情で部屋の奥へと戻ってしまいました。


——鍵を手に入れて樹月の部屋に入る澪。

しかし、そこには繭の姿がありません

部屋を探索すると「蔵の鍵」がありました。

「樹月くんに聞けば、村から出る方法を教えてもらえるかもしれない…」

ふと振り返ると、格子窓の隙間から紗重がせまってきているのが見えます…。
もう逃げられないと思った瞬間…。

部屋に入ってきたのは繭でした。

「澪……澪、私、自分がどうなってるのかわからないよ……。けど、なにがあっても澪のこと許すから……。置いて、行かないで……」

「おねえちゃんを置いていくわけないじゃない。ずっと探してたんだよ。早く……この村から出よう」

「うん」

この瞬間、確かに二人は心を合わせることができたのです。


——鳥居の周りに火が灯りました。

外では祭りの準備が始まっています。

残された猶予はもうわずかしかありません…。

あらすじ⑨


  • 繭と紗重の境界は、澪の中でも大きく揺らぎ始めている
  • それでも澪は、目の前の存在が誰であれ「繭を連れて帰る」ことを諦めない

八ノ刻|片割れ月(かたわれづき)

心が合わさる澪と繭
あらすじ⑨

蔵を訪れる澪と繭。
入手した鍵で中を開けると、樹月の姿はありませんでした。

——樹月は八重と紗重を逃がしたあと、自ら命を絶っていたのです。

その事実を知った繭は、かつて絶望した紗重と重なるように、蔵の中で泣きながら立ち尽くしています…。

澪は蔵の中で村の外へ出るための手がかりを見つけました。

昔、村から逃げようとした双子が使った「古い深道」。
そこを通れば、皆神村から出られるかもしれません。

澪は繭を連れて、古い深道への封印を解く「家紋かもんを探し始めます。


家紋探しの途中、桐生家の映写室で祭りの映像を目にした繭は、幼い頃に澪とはぐれた日のことを思い出します。

人混みの中で澪を見失い、追いかけても追いつけなかった記憶…。
その出来事は、繭の中で今も深く残っていました。

澪は繭の手を握り「村を出たらまたお祭りに行こう」と声をかけます。
けれど繭は、もう元の場所には戻れないことを示すかのように、静かに目を伏せるだけでした。


その後も、繭の言葉や行動は少しずつ不安定になっていきます。

二階渡り廊下で欄干らんかんへ引き寄せられ、身を乗り出す繭…。

「私だけが落ちて……私だけが……」

澪はあわてて繭を抱きとめます。
その瞬間、二人の姿は八重と紗重の姿に重なりました。

「あの時……一緒に落ちても良かったんだよ」

その言葉に、繭は一瞬だけ我に返ります。
けれど、いったん深く揺らいだ心は、もう元の場所には戻れませんでした…。


やがて二人は道外れの池に辿り着きます。

月明かりの水面を見つめながら、繭は別の記憶をなぞるように言いました。

「よく、ここで遊んだよね。ここも、もうすぐなくなっちゃうんだよね」

澪が「もうすぐ村から出られる」と励ましても、繭の目はうつろです。

「そう、二人で逃げるの。約束したよね……」

澪はためらいながらも頷きます。
繭は背後から澪を抱きしめ、もう少しここにいたいと願いました…。


その後、家紋を集め終えた二人は空洞くうどうへ入ります。
そこは、虚へ落とされた「双子巫女を祀る場所」であり、「古い深道への封印を解く場所」でもありました。

疲れ果てた繭は、その場で深い眠りに落ちます。

澪が繭の頬に触れると、意識は繭の内側へと引き込まれていきました。


夢の中で澪が見たのは、深い地下に開いた大きな穴。
見ることを禁じられた場所——「虚」でした。

虚をのぞき込む澪の視界は、かつて崖の下へ落ちた繭を覗き込む記憶と重なります…。


夢から戻った澪は、家紋を使って古い深道への封印を解き、繭を抱き起こしました。

けれど繭は、うわごとのように呟くだけです。

「澪のこと……なにがあっても……許すから……。私、もう落ちたんだ。私……もう……」

まるで心の一部を虚へ落としてしまったかのような繭を支えながら、澪は「古い深道の入口」である「暮羽神社くれはじんじゃ」へと向かいます。

あらすじ⑩


  • 繭は、「幼い日の記憶」「紗重の記憶」そして「置いていかれる」という恐怖が入り混じり、心の輪郭そのものが崩れ始めている
  • 澪は、虚を覗く夢を通して少しずつ「落ちた側」の感覚へ近づかされていく

終ノ刻|紅い蝶(あかいちょう)

紅い蝶
あらすじ⑩

朦朧とする繭の手を引き、澪は暮羽神社へ続く石段をのぼっていきます。

あと少しで神社に辿り着く…。
そう思った瞬間、太鼓の音が響きました。

集まってくる村人たちの霊。
澪は必死に繭を守ろうとしますが、遅れた繭だけが捕らえられてしまいます。

一人は逃げ、一人は捕らえられる。

八重と紗重の過去が、澪と繭のあいだで再び繰り返されたのです。

「ずっと一緒だから。約束したから……」

澪は村人たちの霊を打ち払うと、決意を新たに攫われた繭を追いかけます。


——紅い蝶を頼りに黒澤家に辿り着く澪。

黒澤家で見かけた繭は無理やり連れていかれているのではなく、自らの意思で進んでいるように見えました…。

「これでいいんだよ……」

諦めを含んだその声は、繭のもののようであり紗重のもののようでもあります。
そこには「置いていかれた痛み」「逃げようとした後悔」「迎えに来なかったことへの憎しみ」そして「それでも消えない愛情」が混ざっていました。

繭はどんどん奥へと進んでいきます。


追いかける途中、澪は繭の想いが込められたお守りを拾いました。
お守りからは繭の気持ちが伝わってきます。

「澪……ひとりで逃げて……何があっても、澪のこと許すから……」

その言葉はむしろ「置いていかれる痛みを繭が今もなお抱え続けている」という事実を、澪にあらためて突きつけました。


——やがて、黒澤家の深道へと辿り着いた澪。

奥へ向かうほど、繭とも紗重ともつかない声が響いてきます。

「ずっと待ってた」

「ずっと……ずっと……」

「はやく来て……」

「やっと来てくれた」

繭と紗重…。
二つの声が重なり、澪自身もまた、八重の後悔へ引き寄せられていきます


——目の前に広がる巨大な穴「虚」。

そのすぐ手前には、繭が静かに立っていました。

あらすじ一覧


  • 繭の声と紗重の声はほとんど分かちがたく重なっていく
  • 澪は八重の後悔へ深く引き寄せられていく
  • 虚の手前で向き合っているのは、澪と繭であると同時に、八重と紗重でもある

本編の整理&考察|澪と繭は皆神村で何を辿るのか

本編オープニングでの澪と繭

ここからは、澪が本編の中で何を見て、どこで繭とのズレに直面し、どのように変わっていったのか整理していきます。

澪は最初、繭を守ってこの村から連れ帰ることだけを考えていました。

今までずっとそうしてきたように、今回もまた「自分がしっかりしていれば大丈夫」と信じていたのです。

けれど皆神村で起きた出来事や双子たちの記録、そして繭自身の変化に触れるなかで、その認識は少しずつ揺らいでいきます。

本編序盤の澪|「守る妹」として繭を連れ帰ろうとしていた

回想に耽る澪

澪は射影機を拾う前も拾った後も、一貫して「繭を守る妹」として行動します。

皆神村という異質な場所に迷い込んでも、澪の目的は最初からはっきりしていました。
それは「繭を連れて、無事にここから出ること」です。

このときの澪は「二人の抱えているズレ」村で起きた出来事とは切り離して考えていたのです。

  • 村は異常で恐ろしい
  • 霊は危険
  • それでも自分がしっかりしていれば、繭を守って帰れるはず

澪は、あくまで外から迫ってくる恐怖から繭を守る側でい続けます。

ただ、そこには優しさはあっても繭への深い理解はありません。

澪が繭を守ろうとすればするほど、繭は皆神村へと引き込まれていくのです…。


澪の言葉はいつも「守る」「連れ帰る」「ここから出る」という形をとります。

こうした正しくて現実的な言葉は「繭を守りたい」という澪の優しさの現れです。
しかし、それだけでは「繭の抱える恐怖」には届きません。


  • 繭が怯えているのは村の異常さや霊の存在によるものだと澪は認識する
  • 守ることを最優先にしていて、繭の本心にはまだ触れられていない
  • 村から出ることが解決につながると思い「一緒に帰ろう」と言う

繭の変化|澪が守ろうとするほど繭は村へ引き込まれていく

繭の感じていること

オープニングの思い出の沢の時点で、すでに繭は紅い蝶を追って澪から離れています。
今ここで澪と一緒にいること以上に大事なもの——「澪と二度と『分かれない』で済む場所」が繭にはえていたのです。


皆神村で過ごす内に繭は意識を混濁させていきます。

「誰かが……ずっと私を呼んでた……戻ってこいって」
「私、ここにいたことがある」
「本当に逃げるの……?」

繭がこの村を「異常」ではなく「自分が帰るべき場所」として感じ始めているということが、こうした言葉から分かります。

もちろん、繭の言動の変化は紗重の影響が主な要因です。
しかし、繭は受け身のままただ操られていたというわけではありません。

繭自身の内側には最初から皆神村——ひいては「虚」の構造に共鳴する部分がありました。

その最たるものが「分かれたくない」という感情です。

繭の抱える「別々になりたくない」「置いていかれるのが怖い」という強い想い…。

紗重が重なった後、繭はそうした想いをより深いところまで増幅させ、紗重以上に沈んでいきました…。


澪は「一緒に、ここから出よう」と繭を励まします。
けれど繭にとって問題なのは、村の外へ出られるかどうかではないのです。

  • 村の外に出た後、澪とは別々の存在として生きていくこと
  • 澪が成長してどんどん世界を切り拓いていき、いつか自分を置いていってしまうこと

繭が本当に恐れているのは、澪との分離そのものでした。

——だからこそ、雛壇の部屋で再会したときの繭の言葉は重いのです…。

「澪、怖いよ。一緒にいよう。ずっと一緒にいよう……約束して。」

これは「村の異常に怯える言葉」のように聞こえながら、実際には「ここから出たあとも別々にならないことを、置いていかないことを約束して」という必死の懇願でした。

「澪……ひとりで逃げて……何があっても、澪のこと許すから……」が意味するもの

澪を許す繭

繭の「ひとりで逃げて」は、澪を手放すための言葉ではありません。

繭は、澪が自分を置いて本当に一人で逃げるような子ではないことを、誰よりもよく知っていました。

だからこそこの言葉は突き放しではなく、最後には自分のもとへ来てくれる」ということを確かめる呼びかけだったと考えられるのです。

この「確かめる呼びかけ」は、前日譚小説で繭が何度も「ずっと一緒だよね」と約束を確かめていた姿勢の延長として見ることができます。

続く「何があっても、澪のこと許すから……」という言葉も、澪を切り離すためのものではなく「それでも自分は待っているから来てほしい」という、繭のねじれた願いの表れです。

つまりこの言葉は拒絶ではなく「置いていかないで」を反対の言葉でしか言えなくなった繭の本心だったのです。

前日譚小説の繭と本編の繭の違い

繭の心境の変化

前日譚小説の繭は、澪と分離していく未来に対してどこか達観していたようにも見えます。

それに対して本編の繭は「二人で逃げるの。約束したよね……」と口にするなど、外の世界に一緒に出て、二人で生きていく可能性にも揺れています。

この差は、皆神村で紗重の記憶が流れ込み「置いていかれた紗重」だけでなく「まだ八重と一緒に逃げたいと望んでいた頃の紗重」の気持ちまで混ざってしまったからだと推察できます。

本編の繭は「繭自身の元々抱えていた恐怖」と「紗重の想い」とが重なった、より不安定な状態にあったのです。

澪と繭の認識の違い

繭を置いていく澪

二人の認識のズレがもっとも鮮明になるのが、座敷牢の場面です。

「まって!おいていかないで」
「約束したじゃない!」
「手を……離さないで……」

ここでの繭は「幼い頃に手を離された記憶」と「今、自分を置いていこうとする澪の行動」を同じものとして捉えていました。

——繭にとっての全ては「澪とずっと一緒にいること」であり、澪以外は何もいらない

それはすなわち、置いていかれた瞬間「繭は自分を保てなくなる」ということに他なりません。


澪は、それでも「外へ出るため」に繭の手を振りほどきました。

この選択は澪にとっては繭を助けるための行動でしたが、繭にとっては「澪は自分とは同じではない」という事実として映ります…。

繭は段々おかしくなっていったのではありません。
最初から抱えていた「分かれたくない」という感情が、紗重を媒介にしてよりむき出しになっていっただけなのです。

八重と紗重は何を映していたのか|澪が自分と繭の原型を知る

八重と紗重

澪に最も認識の変化を与えたのは、やはり八重と紗重です。

二人は最後の双子巫女であり、紅贄祭から逃げたことによって結果的に村を大償へ導くことになった原因でもありました。

けれど澪にとって重要なのは彼女たちが「村を滅ぼした双子」だったこと以上に自分たちとあまりにもよく似た双子だったことです。


八重の日記には「澪にそのまま重なる言葉」がいくつも残されています。

「ずっと一緒だって約束したから」
「私たちは、いつまでも二人一緒にいよう」
「ずっと、私が守ってあげるから」

ここでまず目を引くのは、八重の「ずっと一緒」が、澪と同じく二人で外へ出て、その先も一緒に生きていく未来へ向いていることです。

  • 八重は紗重を守ろうとしている
  • 村の外へ連れ出し、二人で生きていこうとしている

この立ち位置は、本編序盤の澪と全く同じです。

けれど、その八重の日記は最後にこう崩れていきます。

「もう村には入れない」
「手を離さなければ……手を離さなければよかった」

この言葉は、澪にとってあまりにも他人事ではありません。

  • 自分もまた、幼い頃に繭の手を離した
  • 一人が落ち、一人が残された

八重の顛末は「自分が辿り得る未来の原型」として映ったのです。


紗重の日記には「繭にそのまま重なる言葉」がいくつも残されています。

「おねえちゃんと一緒にいられるなら、どこへでもついていく。だから、置いていかないで」
「私は体が弱いから、置いていかれるかもしれない。おねえちゃんと心が離れていくのがこわい」
「生きていくほど、どんどん離れていく気がする。それなら、いっそひとつになりたい。そうすれば、ずっと一緒にいられる」

紗重にとって本当に耐えられないのは、別々に生きて死んでいくことでした。

——「置いていかれるくらいなら、いっそ一つになりたい」

この言葉は、澪にとって繭への理解を深めるきっかけになります。

紗重の切望は繭の抱えている痛み——「恐怖の原型」として映ったのです。


  • 八重は、手を離した側の後悔を抱えている
  • 紗重は、置いていかれた側の痛みを抱えている
  • 八重と紗重の想いを受け止めて、澪は少しずつ繭の本当の気持ちに届いていく

桐生姉妹の記録は澪に何を見せたのか|「一つになりたい」願いの危うさ

紅い蝶となった薊

八重と紗重の日記が澪に「手を離した側」と「置いていかれた側」の原型を見せたのだとすれば、桐生姉妹の日記は「双子の関係の危うさ」を突きつけました。

つづられていた言葉は直接的で、もっと逃げ場のない「一つになりたい」という願いが行き着く先そのものです。


茜の日記には、紅贄祭の儀式がどのような形で双子を壊していくのかが、むき出しの感情として残されていました。

「わたしの手が、薊の首をしめた」
「わたしは薊とひとつになった」
「大好きだから儀式をした。大好きだからころした」

ここで恐ろしいのは、茜が薊を憎んでいたから殺したのではないことです。
むしろ逆で、大好きだからこそ殺したと書かれている…。

愛情と儀式と暴力が、ここではきれいに分かれていません。
「一つになる」ことが相手を失うこと」とそのまま結びついてしまっているのです。


薊の日記には、こうあります。

「わたしのかわりなんかいらない。わたしは、茜おねえちゃんと一緒にいるもの。茜おねえちゃんと一つだもの。ころして。あの人形をころして。」

この言葉の中には、繭や紗重に通じる要素がいくつもあります。

  • 必要なのは片割れだけで、代わりはいらない
  • 他の誰かでは埋まらないし埋められない
  • 「一緒にいる」ことと「一つである」ことが同じ

言うなれば片割れとの「分離の否定」です。


桐生姉妹の記録は「双子がずっと一緒にいたいと願ったとき、その願いは『支え合って生きる』方向ではなく『片割れ以外は要らない、分かれたくない、一つになりたい』という方向へ傾くことがある」という可能性を澪に突きつけました。

これは澪にとってかなりの衝撃でした。
なぜなら澪は、それまで「守ることで繭との関係を保てる」と考えていたからです。

しかし桐生姉妹の記録が示していたのは、優しさや保護だけでは届かない関係のかたちでした。
澪にとって桐生姉妹は、繭の心の底にある望みの危うさ」を先回りして見せる存在だったのです。


本編終盤の澪|「守る」だけでは届かないと知り始める

繭に届かない手

村を進み「八重と紗重の過去」や「桐生姉妹の記録」に触れていくうちに、澪は少しずつ気づき始めます。

今まで信じてきた「守る」というあり方が、繭には届かなくなってきているということを…

「おねえちゃんが本当に怖がってるのは、この村のことなんかじゃないのかもしれない……。
もっと深いところ……私と別々になっていくこと、なのかも……。」


そんな気持ちが湧いたとき、澪ははっきりと思い知らされました。

雛壇の部屋で「澪、怖いよ。一緒にいよう。ずっと一緒にいよう……約束して。」と訴えた繭が本当は「ここから出る未来」ではなく「どこにも行かないこと」「別々にならないこと」を約束して欲しかったのだということを…。

その直後、座敷牢で自分が「一緒にいる」という約束を破り、繭を傷つけてしまったということを…。


澪が正しいと思って行動したことが、そのまま繭を救えるとは限りません。

「繭を守ること」と「繭の望みに応えること」は、必ずしも同じ意味にはならなかったのです。

澪が変わるということはすなわち、「今まで信じてきた前提が崩れ始めること」と同じでした。


澪はどう変わったのか|過去への囚われから、繭の恐怖を理解する側へ

繭との最後の対話

澪は最初から強い子でした。
繭を守ろうとして異常な村の中でも率先して前へ進み、危険に立ち向かい続ける…。

けれど本編を通して揺らいでいくのは強さではありません。
「自分は繭を守ればいい」という前提のほうだったのです。

中盤までの澪は「守る」ことで繭との関係を保とうとしていました。
それは優しさであり、責任感であり、同時に手を離してしまったことへの「過去の囚われ」でもありました。

しかし澪は、次第に知っていきます。
繭が本当に恐れていたのは霊や儀式や村の異常さではなく、別々になって生きていくことそのものだったのではないかと…。

八重と紗重の過去は澪に「自分たちの関係の原型」を見せました。
桐生姉妹の記録は「一つになりたい」という願いがどこまで危うく、そして切実なものなのかを突きつけました。

そうしたものに触れるなかで澪は、自分にとって繭が「ただ弱くて守られるだけの存在」ではないということに気づいていきます。


この変化は、リメイク版の「羽化+残り陽エンディングルート」でのみ決定的になります。

「あのとき……あのとき手を離さなければ……手を離さなければよかった……おねえちゃん……あのとき……一緒に落ちてもよかったんだよ……そうしたら……おねえちゃんと同じになれたのに……これからは一緒……最期のときまで一緒にいたい……」

物語最終盤、澪は自分自身の本心に触れます。

ここで澪は初めて自分の中にも

  • 一緒に落ちてもよかったという願い
  • 落ちていたら繭と同じ痛みを抱えることができたのに、という感覚
  • 終わるときは一緒にいたいという想い

があったことを知るのです。


皆神村で触れてきた霊たちの記憶、記録、想い、自分自身の本心を通してやっと澪は、繭の恐怖を外から助けるべき対象ではなく、自分の内側にもあるものとして受け取れる地点まで辿り着くことができるようになります。

「自分の信じてきた正しさ」が必ずしも繭を「本当の意味で助けられるとは限らない」ことを学び、深く理解し、繭の恐怖を自分の痛みとして感じられるように澪は変わっていきました。

まとめ|本編は、澪が繭の恐怖に追いついていく物語だった

澪が繭を理解できた瞬間

『零 ~紅い蝶~』の物語は「守ること」で繭に向き合っていた澪が、「繭の恐怖そのもの」に触れていく物語です。

では、なぜ澪は繭の恐怖そのものに触れていくことになったのでしょうか。

それは、繭の本当に恐れていたものが「村の異常さ」ではなく「澪と分かれていってしまう現実」そのものだと知ってしまったからです。

そこにあったのは、「守る」だけでは届かない恐怖でした。

繭の恐怖の深さを知り、その痛みに追いついていく…

そうして最後には繭の恐怖が「自分の内側にもある痛み」として受け取れるところまで澪は辿り着きます。

澪は理解の及ばなかった「繭の恐怖」にようやく手が届くところまで変わったのです。


——しかし、「理解」と「救い」は必ずしも一致するとは限りません。

次回は、繭の恐怖を引き受けた果てある痛み…「紅い蝶エンディング」が何を示しているのか考察していきます。

よろしければ引き続きお付き合いください。

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※本記事は『零紅い蝶 考察』シリーズの一部です。
※記事内画像には、作品世界をもとに作成した非公式の生成画像、および『零 ~紅い蝶~REMAKE』『零 ~眞紅の蝶~』本編のスクリーンショットが含まれます。『零 ~紅い蝶~』に関する権利はコーエーテクモゲームスに帰属します。

※現在入手が難しい公式資料の内容にも触れていますが、物語理解に必要な範囲で要点を整理し、考察を中心に構成しています。

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